機動戦士ガンダム THE ORIGIN 1

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 今年2月末に2週間ほど上映された劇場版新作ガンダムのBlu-ray、先月末に発売されたので購入して4回ほど観てみた。
毎度の事ながらネタバレしない程度で自分なりの感想を書いてみたいと思う。
あくまでも私個人の一ファンとしての感想であり共感できないと思われるところもあるかもしれないが、そんな時は読み飛ばしていただきたい。

 「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は機動戦士ガンダム(TV&劇場版)のキャラクターデザインをされた安彦良和氏が原作のマンガで、2001年6月から2011年6月までガンダムエース誌で発表された。
いわゆる富野監督のガンダムの世界を安彦氏のアレンジで再構築されたと言える作品である。
今回アニメ化された「THE ORIGIN 1・青い瞳のキャスバル」はマンガ原作の中の「シャア・セイラ編」が舞台である。(ちなみにこのあたりは私は原作を読んでいない)
原作者の安彦氏が総監督をされるということもありとても期待をしていた。
観終わってまずは「引き込まれる良いストーリー展開」でとても楽しめた。
ランバ・ラルとクラウレ・ハモンの活躍がとにかく痛快で二人のファンである私は拍手喝采である。
キャラクターデザインも安彦氏のキャラをうまく再現できていると思うし、カトキハジメ氏のメカニックデザインもカッコよくてキレイな絵だと感じた。
ただ、どうしてももったいないと思ったのはCGの使い方(と言って良いのかな)だろうか。
一言でいえばCGに頼りすぎたように見えてしまうのだ。
特に冒頭のルウム戦役のCGシーン、一見するとなめらかに動くザクIIやムサイなどの艦船が本当に良くできている。
昔からガンダムを観ているファンはこんなにリアルに動くザクIIを見て感動するであろう。
しかし、観ているうちに違和感を感じ出す自分に気付くのだ。
UCの作画をされていた野崎さんとお話しさせていただいた時に話題にでたもののなかに「ガンダムのファンは徹底してリアルにこだわる傾向の人が多い」がある。
感じ方は別かもしれないが、どうやら私もその一人に入るらしい。
すでにRTX-65ガンタンクが存在するなど安彦氏に再設定されている世界とは言え、基本設定はそれほどオリジナルとは違わないと思われるオリジンの世界、南極条約締結以前のルウム戦役時のザクIIは核弾頭使用を想定して耐核装備が施された初期量産型のMS-06Cと思われる。
シャアの機体もこれだろうと初めは思ってたのだが、調べてみるとルウム戦役時もS型との記述があったのでどうやらS型と想定。
C型の耐核装備は重量がかさみ機動力に問題があったため、おそらくシャア専用機はC型をベースに耐核装備を排除しさらにシャアの好みに合わせて各種リミッターをカットしたものであろう。
通常の3倍のザクはこの時点でC型の3倍と考えられる。
ちなみに耐核装備をはずして再調整されたのが量産型ザクII MS-06Fである。
話をもどして、いくらS型とはいえ、画面でのシャアザクの動きが速すぎるように感じる。
推進力が高いのはわからないでもないが、各所の動きがなめらかに速く動きすぎているように感じてしまう、そう、反応速度が速すぎるように見えるのだ。
例えばRX-78-2ガンダムだが、当時公国のMSが関節などの駆動部に採用していたパルスモーターよりも反応速度や出力的に進化したフィールドモーターという技術を採用している。(Iフィールドを利用)
そのガンダムでさえアムロの操縦に反応できずマグネットコーティング処理で対応しているのに、当時のザクIIが人体がそのまま動くように素早くなめらかにストレス無いように動くところに違和感を感じたのだ。
なお、公国系MSは連邦系フィールドモーターとは異なったアプローチで反応速度をあげる試みをする(サイコフレーム)のだが、それはもっと後のお話。
後からネットで劇場で観た人たちのレビューを見たのだが、この部分は本当に賛否両論だった。
ザクがグリグリ動いて感動したという意見がありながら、こんなに動いて良いのか?という意見がとても多いのだ。
この後の本編の映像とあまりにも差があり、逆に統一感が失われてバランスが悪く「このシーンは要らなくても」と私は思ったのだが、同様の感じを持った方もおられたようだ。
ちなみに、2004年に公開された「機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-」というフル3DCG作品においてルウム戦役のシーンがあるが、画面全てがCGだったということもあるのかこちらはそれほど違和感も感じず、MSの動きもすんなり受け入れられた。

本編でもかなりのCGが使われているが、やはり何だかCGに頼りすぎてる感がするのは私だけだろうか。
私の中で象徴的にわかりやすかったのが馬が動くシーン。
あるシーンでは線画(動画)で表現された馬が出てくるが、こちらはしっくりしていて全く違和感を感じなかった。
しかし別のシーンでCGの馬が出てくると、こちらの馬の動きが違和感満載。
私は競馬を観るのが好きで良く競馬中継で馬を見ているのだが、少なくとも競馬に出てくるサラブレッドはなめらかながらすごくシャープな動きで、見た目かなりゴツゴツした感じで動く。
これを見慣れているので、あのCGの馬はなめらかすぎてリアルに見えなかったのだ。
その他にもいくつかあげられるのだがきりがないので、まとめるとCGと線画のバランスがもうひとつで画面が馴染んでないと言うかとにかくバランスが悪く感じたというのが正直なところなのだ。
メカもキャラも素晴しかっただけに本当にもったいなかった。

私が思うに、ある経験がなければここまで思わずにもろ手をあげて「最高!」と言っていたかもしれない。
その経験とはまさに「機動戦士ガンダム ユニコーン(UC)」の映像を観てしまったことだ。
UCはストーリー、声のイメージ、映像の完成度、キャラクター、メカ、線画とCGのバランス全てにおいて私の中ではこれまで観た中で間違いなく最高傑作である。
アニメーションの絵の性質上、手描きの線画が映像のイメージをまとめるものと私は考えている。
UCはキャラクターのみならずMSまで線画メインで作るという方針だったそうなのだが、コスト面を考慮すればこの方式はもはや時代遅れだそうだ。
ただ、その方式で最高の映像を作られその映像を観てしまったファンとしては、どうしてもそのレベルを求めてしまうのだ。
ただ、UCほど手描きにこだわらなくてもしっくりくる映像はできるはずで、例えば「劇場版PSYCHO-PASS サイコパス」なんかもかなりCGが使われていたが、手描きの部分が上手く全体をしめていて違和感もなく楽しめた。
おそらくはCGと線画のバランスが映像のイメージと合っていれば違和感を感じなくなるのではないだろうか。

一ファンとしていろいろと厳しい意見を書いてきたが、作り手の方達のお仕事自体を否定するつもりはないと言う事だけは付け加えておきたい。
冒頭にも書いているがこの作品は充分楽しめたし、これからのオリジンという作品自体も楽しみにしているし期待もしているのは間違いないのだ。

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ホームページ

あんあん について

1967年 長崎県島原市生まれ ガンダムとMacとF1をこよなく愛するおぢさん。 タイトルの(Z)は「ゼータ」と読んでね。
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