機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

 2週間ほど前の4月2日(日)、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(以降、オルフェンズ)」が最終回を迎えた。
たまたま当日の仕事のシフトのおかげで最終回はリアルタイムで観れたのだが、改めて録画を観直して感じたことを書き留めておこうと思う。
ネタバレになると思うが、まぁ、完結した作品ということでご勘弁いただきたい。
また、そもそもこのオルフェンズをご存知でない方は公式ホームページやWikipediaなんかに詳細があるのでそちらをご覧ください。

 2015年10月から放送された第一期も含め、ストーリーの前提となる各設定がとにかくリアルであったことにまずは食いついてしまった。
テラフォーミングが完了して相当程度経過した火星が舞台、貧困のために孤児となった子供たちが「宇宙鼠」や「ヒューマンデブリ」と呼ばれる奴隷として取引される世界、火星の部分は別として現在の世界でも貧困国で充分存在するような設定である。
奴隷として搾取されるだけの存在の彼等には、生きるために受け入れなければならないものである。
そのような中で火星の警備会社、クリュセ・ガード・セキュリティ(CGS)の孤児やヒューマンデブリで構成された非正規部隊「参番組」はクリュセ自治区首相の娘で火星の独立運動の中心人物、クーデリア・藍那・バーンスタインの警護を任される。
クーデリアを危険人物と警戒していた地球の治安維持組織ギャラルホルンはクーデリアが保護されているCGSを襲撃するのだが、その際に全てを参番組にかぶせて逃走するCGSの幹部や実動部隊に対して、オルガ・イツカ率いる参番組はクーデターを起こし独立するところから話は始まる。(独立後、参番組は鉄華団と改称)
そこから最終回に至るまで、沢山の犠牲を出しながらも鉄華団とクーデリアは自らの目的のために成長しながら走り続ける。
特に第二期に入ってからの展開がどんどん重くなっていき、このストーリー展開にファンの間では賛否両論となっている模様だ。

私の感想としては「しっかりした設定としっかりした明確なストーリー展開で、良い作品だった」である。
オルガをはじめ、鉄華団のみんなは生きるために一生懸命だった。
リーダーのオルガは自分と仲間たち(家族と表現される)が人として生きることができる場所を確保するためにひたすら心をくだく。
そして幼少期にオルガに助けられた(と思っている)主人公の三日月・オーガスは「オルガの目的のために行動する」という意識を持っており、よって、三日月はオルガの指示の通りに動く。
ただ、いかんせん教育をうけていない彼等は「世の中をわたる術をはじめ格闘以外の全てにおいての経験値」が極めて乏しかった。
だから自分らの目的への到達を急ぎすぎたのかもしれない。
ギャラルホルンの内部抗争、後に「マクギリス・ファリド事件」と呼ばれる抗争に巻き込まれてしまったのも経験値の乏しさから来たものであろう。
その事件の首謀者マクギリス・ファリドにしても、ギャラルホルンの腐敗を正すために起ち上がったものの、幼少期の経験から「他を圧倒し得る力」に固執する余り状況判断を誤ってしまい破滅へと落ちていく。
マクギリスの蜂起を好機と判断し、でっち上げとも言える大義名分をいわゆる錦の御旗として掲げて、マクギリス、そして鉄華団を武力制圧したギャラルホルンのラスタル・エリオンの策略が老獪で一枚も二枚も上だったのは間違いない。
劇中でオルガがラスタルに降伏しようと連絡を入れるシーンがあるが、ギャラルホルンの権威を取り戻すためにはマクギリスだけでなく「悪の手先である鉄華団の抹殺」が必要とつっぱねる。
そのあたりのくだりもある意味とてもリアルである。

地球の経済連合のひとつで、クーデリアや鉄華団と関係が深いアーブラウ代表の蒔苗たちの助力を受け何とか生き残る道へとメンバーを導こうとするオルガだが、そのオルガも最終話を前にして殺害されてしまう。
メンバーの中にはオルガ殺害の報復へと傾く者も出る中、オルガの遺志を語った三日月の命令により鉄華団のメンバーはオルガが願った通り生き残る道を選ぶのだが、ギャラルホルンからの攻撃を防ぎつつ脱出の時間稼ぎのためにモビルスーツ隊が防戦に出撃し三日月やもう一つのガンダムフレームMSに乗る昭弘・アルトランドなど数人が犠牲となる。
ギャラルホルンの虐殺にも近いような作戦と、圧倒的な戦力差にもかかわらず生き残るため、仲間を助けるためにそれに対抗する三日月達、その戦いの中で悲惨ながらも救いだったのは三日月も昭広も無念の思いを持たずに死んでいったことか。
特に三日月は「オルガが望むから戦う」という意識から「自分が戦うことにより多くの仲間の命を救うことができる」こと、その先にオルガが望んだ「家族が笑って過ごせる場所」につながってることに気付きながら死んでいった。
ラスタルを崇拝するMSパイロット、ジュリエッタは戦いの最中「なぜ大義のない戦いをするのか」と三日月を非難するも、三日月の戦いが「ただ生きるために戦っている」ことに気付かされることとなる。

その後、ギャラルホルンの体制はラスタルの手により改変され、結果的にマクギリスが目指した世界へと変わる。
そして、火星もギャラルホルンの火星支部縮小に伴い地球の支配体制より離れ火星連合という自治体制に移行し、その連合議長にクーデリアが就任、さらに、ラスタルとクーデリア(ギャラルホルンと火星連合)により宇宙鼠やヒューマンデブリなどの奴隷取引を撤廃させる施策を協力して推進することで一致、調印することとなった。
火星独立はクーデリアが目指し、奴隷撤廃=人として生きられる世界は鉄華団が目指した世界である。
マクギリス・ファリド事件の犠牲は大きかったと思うが、最終的には世界は変わっている。
生き残った鉄華団のメンバーは名前や素姓を変え、クーデリアが作った組織の中で生活している。
おそらくはラスタルもそれに気付いていただろうが、それを黙認しているのは既に「鉄華団という組織の壊滅」という事実があるからであろう。

色々な理不尽なことや不条理なことがつまった、現実世界にもあり得るリアルなストーリーだったと思う。
そのようなリアルさをアニメのストーリーに持ってきたのがもしかしたら敬遠されたのだろうか。
この作品の作画もされている野崎さんは「ロボットアニメは基本戦争だからどうしても人の死は免れない」とおっしゃっていたのだが、まさしくその通りだと思う。
最終的なハッピーエンドのために必要なストーリー展開であったと私は思う。
「理不尽さを感じながらも腑に落ちる」ストーリーと表現しよう。
重厚なストーリーと綺麗な画面(作画)、本当に素晴しい作品だった。
野崎さんはじめスタッフ・キャストのみなさま本当におつかれさまでした。

■■サイトリンク■■
○機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 公式ホームページ

あんあん について

1967年 長崎県島原市生まれ ガンダムとMacとF1をこよなく愛するおぢさん。 タイトルの(Z)は「ゼータ」と読んでね。
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